古民家は人を育てる
古民家再生には様々な伝統技術が使われます。その中には、現代ではなかなか見ることができなくなった技術もあります。「曳家(ひきや)」もその一つです。
曳家とは建物をそのまま持ち上げ、移動させたり向きを変えたりする、建築物保存のための技術です。その歴史は古くピラミッドを造ったテコとコロの技術にまで遡ります。現在では建物の移動や沈下の修整・補強などを主な業務にしており、文化財の保存という分野で活躍している技術者集団です。
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古民家再生では、この曳家さんにお世話になることがよくあります。古民家は石の上に柱が載っているだけという構造が多いので一度建物全体を持ち上げて基礎をつくらなくてはなりません。
家一軒まるごと持ち上げる仕事は、建物に傾きや歪みを与えないよう慎重の上に慎重を期して行なわれます。それでなくても弱っている建物。大工たちの「歪ませないでくれ」という思いのこもった視線に見つめられながら、プロの仕事が続けられていくのです。
基礎が終るといよいよ大工の出番になります。現代では見たこともない技術に触れることができる古民家再生は大工にとって宝の山。みんなが再生の現場に行きたがります。
昔の大工の技術に感心したり、その応用力に舌を巻いたり。古い材の上に新しい材を接ぐような時には、それこそ真剣そのもの。その時、大先輩であるその大工と現代の大工は、心の中で会話しているのでしょう。
飛鳥時代に大陸から伝わった瓦。やがて日本家屋に不可欠なものとなり、職人達が伝統の技を継承してきました。若き瓦職人・北野巧太郎の仕事にかける思いを聞いて下さい。
マツミの大工さんたちは、隠れて見えなくなってしまう所でも、決して手を抜きません。何のためにその作業をするかを、一人一人がちゃんと考えているから、どんなに簡単な仕事に対しても真剣です。たぶん、古民家で昔のすごい仕事ぶりを目にしていることが、みんなにいい影響を及ぼしていると思いますね。